溺愛CEOといきなり新婚生活!?
永井さんの自然な黒髪は艶やかで清潔感があり、ピアスなどの類はしていないのがはっきりと分かる長さだ。私をエスコートしてくれた大きな手に結婚指輪はないけれど、明らかに高級そうな時計が手首を飾っている。
長身から舞い落ちるような微笑みは、思わず息をのんでしまいそうになるほどで、細められる目元が繊細な雰囲気だ。
「じゃあ、俺から自己紹介しますね。改めまして、永井海都と申します。歳は今年で三十三歳。仕事は……名刺を渡した方が早いかな」
そう言うと、彼はソファの背に掛けていたジャケットからカードケースを取り出し、名刺を渡してきた。
「永井ホールディングスって……あの!?」
「ご存知いただけていて光栄です」
緊張のかけらも見せない永井さんは、すらりと伸びた足を組みなおす。
だけど私は、サンプリングマリッジの相手が大企業のCEOと知って、驚きのあまり声が言葉にならない。