溺愛CEOといきなり新婚生活!?

 帰宅して、促されるままにお風呂に入って、声を殺してたくさん泣いた。

 雅哉さんと過ごしてきた二年は、何の意味もなかった。
 ただ浮かれて、愛されていると錯覚して。“無駄”に妬いて怒られたのは、そういう意味だったのかな。


「戻りました……」
「大丈夫? のぼせなかった?」

 リビングに出ると、永井さんは冷えたビールを用意してくれていた。

「平気です。長湯しちゃいそうになりましたけど」
「ゆっくりしてよかったのに。俺に気を使ったの?」

 左右に顔を一往復させると、洗い立ての髪からシャンプーの匂いがする。
 雅哉さんが気に入ってくれていた香りだ。
 ビールの缶を持つ手を飾るネイルも、彼の好みを取り入れている。
 胸元に輝くネックレスも、ブレスレットも、全部雅哉さんが……。

 彼に褒めてほしくて。
 好きだって言ってほしくて。

 愛されたかっただけなのに、どうして――。


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