溺愛CEOといきなり新婚生活!?
「それは……わかりませんけど」
永井さんの彼女のことは何ひとつ知らないけれど、相手が別れたがらないのはそれだけ永井さんを好きだからに違いない。
私が渋々とはいえ雅哉さんの願いをのんだのは、彼を助けてあげたいって思ったから。それは、彼を愛していて、未来ある関係だからこその想いだ。
「きっと、永井さんの彼女さんは、永井さんのことが本当に好きなんですよ」
「……甘いなぁ、本当」
彼は穏やかに笑みを浮かべながらも、キッとした鋭さで私を見つめてくる。
「だから、相手の方のこんな無茶な願いも聞き入れてしまうんですね」
初めて顔を合わせて、この部屋で言葉を交わしてから、まだ一時間も経っていない。それなのに、私を否定するような永井さんの言葉に不快感を覚えた。
初対面の人を相手に言い返すために、ギュッと両手のひらを拳にして意を決する。
「……永井さんに言われたくありません!!」
「でしたら、私が彼女と別れようとしていることも、上遠野さんには関係ないはずですよ」
互いを少しでも知るために設けたこの時間は、あっという間に不穏な空気に変わってしまった。