溺愛CEOといきなり新婚生活!?
「私、雅哉さんのモノじゃないんです。嫌なものは嫌だし、無理なことだってあるんです」
《わかってるよ、それは俺だって同じ》
「じゃあ、もうここから帰ってもいいですね?」
分かってるなら、もっと理解を示してよ。こんなことなら、最初から断ればよかった。
泣きたくなる気分で同意を求めるのに、彼の声色は変わらない。それどころかいつもより冷めて聞こえる気がした。
《それは困る。せめて一週間だけでもいいから、そこで生活してみてよ。相手、永井社長なんだろ? こんな経験、二度とないんじゃない?》
「どうして分かってくれないんですか!?」
雅哉さんの言い分を聞かず、私は怒りと苛立ちをぶつけ続けた。
彼の願いを叶えてあげたい一心で、甘さを出してしまった自分のせいだとも思うけれど、それだけじゃどうにも腑に落ちないのだ。
《三ヶ月経って、花澄が同棲っていうものがどんなものなのか少しでも分かってくれたなら、そのあとは俺と結婚を前提に一緒に暮らさないか?》
待っていたその言葉を、こんな時に電話越しで言ってほしくはなかった。
だけど、手を伸ばせば掴めそうな距離にじれったさを感じていた私は、その言葉をのんでしまった。