溺愛CEOといきなり新婚生活!?
「上遠野さまをきちんと送り届けるのが、私の今の仕事ですのでどうかご理解ください」
「……あの、どうして永井さんはこんなに色々してくださるんでしょう?」
驚いた様子で、運転席の九条さんがバックミラー越しに私を見る。
でもその瞳はすぐに細められ、彼は小さく笑った。
「それは、社長の大切なお方だからです。と言っても、プライベートはあまり存じ上げませんが……。今は、仕事と私生活の境があまりないように見えます」
「私、お仕事の邪魔をしているんじゃないかと思う時があるんです」
ただでさえ多忙な人だ。サンプリングマリッジを始める前から、ずっと忙しい毎日を過ごしてきたに違いないのに、私と一緒にいるせいで貴重なプライベートの時間や息抜きのタイミングを削ってしまっているような気がして……。
「それはないと思いますが、気になるのでしたらご本人にお聞きになった方がいいですよ。社長は誠実な方ですから、上遠野さまが知りたいと仰れば喜んでお話になられるかと」
含みを持たせた九条さんの口調に、私は首を傾げるばかりだった。