溺愛CEOといきなり新婚生活!?
「今日は地下からじゃなくていいんですか?」
「ええ、本日からは正面より入るようにとの指示ですので」
九条さんが丁寧に私を車から降ろす。
その指示の意図が分からないままだけど、気になることは本人に聞いた方がいいと九条さんに言われたばかりだ。
永井ホールディングスの正面にある車寄せには黒塗りのハイヤーが数台停まっていて、まるでホテルのようだ。
大きなガラス扉が左右に開き、一歩踏み入れたエントランスホールには客人が座れるソファがいくつも並んでいる。
受付の女性が三人、九条さんを見つけるなり身体を向けた。
「お疲れさまです。社長室へお連れしますので、入館証をお願いします」
「失礼ですが、お名前と御社名の入った名刺等をいただけますでしょうか」
九条さんが通してくれた受付の女性から返され、私はバッグに入れているカードケースを出そうとしたけれど、すぐに九条さんに不要と言われた。
「社長の大切なお方ですので、このままご案内ください」
彼がそう告げると、受付の三人は揃って驚いた顔を見せ、私に入館証を渡した。