溺愛CEOといきなり新婚生活!?
建物の前は開けていて、近づくとその大きさに圧倒される。
三方向に伸びている建物が一体何なのか表札を探しても見当たらず、携帯を取り出すとタイミングよく彼から電話がかかってきた。
「着いた?」
「はい。美術館のような大きな建物の前にいます」
「ドアを開けて、入ってきて」
そういうと、彼は一方的に終話してしまった。
真ん中に設けられている木目の大きなドアに向かい、両手でゆっくりと引く。ひんやりとした屋内はやや暗く、少し進むと左右に通路が伸びている。
どこにも彼の姿はなく、正面のもう一つのドアを思い切って開けた。
その先は、陽光が差し込む綺麗な空間で……私は何度も瞬きを繰り返す。
「待ってたよ」
広い空間の祭壇に大きな十字架が神々しく輝き、その前に白いタキシードを着た永井さんがいた。
突然のことに立ちすくみ、凛とした彼の佇まいが素敵で見惚れてしまう。
見渡すと高い天井と優美なステンドグラスに圧倒され、しつらえられた天窓から綺麗な青空が見えた。
「おいで」
呼ばれるがままに、一歩一歩確かめるように進んでいく。
向かう先には、優しい瞳で私を見つめている彼がいる。
天窓から射し込む陽光が、私が進む道を照らしていて――。
ここが大聖堂だと理解した時には、涙がこぼれそうになっていた。