溺愛CEOといきなり新婚生活!?

 社用車には、それまで社長以外乗ったことはなかった。
 特別な客人を迎える際も、保有しているリムジンに限られていた。

 それが、三か月ほど前から徐々に変わり、特定の女性だけこの車に乗ることが許された。
 それが、上遠野花澄さん……永井社長の大切な女性だ。


 グループ企業の結婚相談所が主催していたサンプリングマリッジの空き枠に、どういう風の吹き回しかCEO自ら参加すると言った時は驚いた。そして、週が明けてから携帯を何度も気にするようになったのをよく覚えている。

 何か心配事でもあるのか気になって社長に尋ねたら、予想もしなかった返事が返ってきた。


「心配ごとは増えたよ。でも幸せかな……本気の恋だからね。九条には話しておくよ」

 あんなに女性関係に冷めていたのに、たった二日の週末を挟んだだけで……。


「今度から、ATSに彼女を迎えに行ってもらうこともあるからよろしく頼みますね」
「かしこまりました」


 サンプリングマリッジの相手がATSの方なのかと、この時私は知ったのだった。


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