溺愛CEOといきなり新婚生活!?

 条件その一。同棲の経験がないこと。
 私は雅哉さんと近い将来一緒に暮らしたいと思っているから、その時までの楽しみにしたかったけれど、経験のある彼曰く、同棲は甘い時間ばかりじゃないし、できれば先に冷静に現実を見てきてほしいとも言われた。 

 その二。結婚願望があること。
 私、上遠野花澄は二十八歳。つまり、親世代でいう適齢期というものだ。このところ世の中が変わってきて、晩婚でもおひとり様でも生きやすくなったけれど、やっぱり愛する人がいるなら一緒になりたいと思うのは当然のこと。


 最後に、自由に生活を選べる環境にあること。
 ひとり暮らしだし、通勤や生活に不便がなければどこでも暮らせる。


 この条件に当てはまっているからという理由で、彼は私に応募者の足りない企画に参加するように懇願してきたのだ。


「もう一杯だけ飲んだら、出ようか」

 願いを聞き入れてもらえた彼は、胸のつかえが取れたようにホッとした表情でジョッキのビールを飲み進める。
 戸惑う私の様子を気にする素振りもなく、最後の注文を終えてから腕時計を見遣った。


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