溺愛CEOといきなり新婚生活!?
「九条さん」
「はい」
車窓を流れる景色を眺めている彼女が、ふと話しかけてきた。
「……会いたかったです」
父親も、社長も……きっと誰も知らない本当の俺の姿。
愛している彼女だけが知る姿を解き放つように、俺はネクタイを緩めて解いた。
「分かってるよ」
恥ずかしそうに俯き加減でいる彼女の頬に手を添えて、瞳の奥を見つめる。
彼女が香港に出てから一年後。
長期休暇を利用して、俺から会いに行ったことがある。
このまま待っているだけじゃ、彼女は手に入らないと思ったからだ。
それまでも何度か食事をしたことはあったし、なんとなく彼女も俺に興味を持っていてくれるような気はしていた。
ただ、お互い心の中に想いを秘めたまま、離れてしまって……。