溺愛CEOといきなり新婚生活!?

「到着いたしました。何かありましたら、ご連絡ください」
「ありがとうございます」

 いつも社長の運転手をしているから、こういう時も勉強になる。
 気を付けているつもりではあるけれど、リムジンの運転手が頭を下げて見送るその角度が、とても美しいと思った。



「九条さん、ここって……」
「見ての通り、ホテルだね」
「あの、その……」

 手を繋いで館内に入り、そっと離した手を腕にかけ直させた。

 フロントに向かい、予約の確認を含めて名を告げる。


「九条晴馬(くじょうはるま)です。ラウンジを予約させていただいたのですが」
「九条さま、いつもご利用ありがとうございます。どうぞ店舗のほうへ」

 実家に来客があった際、外に宿泊を希望されたらここに通すようにしていたからか、九条の名は知れている。
 だけど、彼女には家柄をまだ話していないから、“いつも”と言ったフロントマンのひと言が気になっているようだ。


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