溺愛CEOといきなり新婚生活!?

 地下にある隠れ家的老舗ラウンジバーは、会員制で一見の客は入れない。
 父親が連れてきてくれてから、俺も何度も利用しているから入れるけれど、もしそうじゃなかったらきっと来ることもなかっただろう。


「なにをムッとしてるの?」

 理由は分かっているけど、あえて聞いてみた。


「……別に、普通です」

 って、その言い方がもう膨れてるじゃない。


 地下へ下る階段の踊り場で足を止め、彼女の前に立ちふさがった。



「いつも、俺がここに来てると思ったんだろ?」
「…………慣れてるみたいだし」
「そうだね、何度も来たことがあるよ。最近で言えば、先週末」

 不機嫌な切なさを瞳に映して、彼女が見上げてくる。
 ストレートの黒髪が後ろに流れ、感情が乗り移った口元は少し尖り気味。

 こんなふうに怒るんだね、梓は。

 まだまだ知らないことばかりだから、今夜はたくさん教えて。


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