溺愛CEOといきなり新婚生活!?
「ごちそうさまでした」
「どういたしまして」
行儀のいいお辞儀に好感を持つ。
彼女は俺のような育ちではなくて、ごく普通の家庭だって言っていたけど、ちゃんと躾をされたのだろう。
そして、彼女も素直にそれを身につけて、社会に出てから色々な経験を積んで……。
「帰りは、タクシーにしますね。晴馬さんのご自宅と逆方向だし」
「そんな気を使わなくていいよ」
「でも……またリムジンに乗るのは気が引けます」
「乗らないから大丈夫」
このまま黙って帰すと思ってる?
ただ会うだけなのに、一年かかってるんだよ。
こうして目を合わせて、同じ場所の空気を吸って、一緒に笑って……。
食事をして、他愛ない話をして。
「梓……まだ帰したくない」
返事を聞く前に彼女の手を引いて、腕の中に包んだ。
小柄で華奢で、守りたくなる。
誰よりも頑張り屋で、いつも周りのことを優先して、自分のワガママは言わない。
友人の期間があったからこそ、知っている梓がいる。
でも……今夜くらいは。
「一晩中、抱きたい」
耳元で囁いてから、彼女の髪や額にキスをした。