溺愛CEOといきなり新婚生活!?
「――永井です」
エントランスにある受付に連絡を入れておく。九条がいない来社は初めてだから、きっと名前や名刺を要求されるだろうし。
「これからいらっしゃる女性は、お通しして構いません」
「かしこまりました」
まだ到着しないかと、壁の時計や腕時計、携帯の時計を順に眺める。
いくら見ていても、平等に時間は進むだけなのに、彼女を待つこの時間だけは待ち遠しくて仕方がない。
前触れなく携帯が震え、反転した画面に花澄からの呼出が表示された。
《海都さん、着きました》
「受付には話してあるから、入館証だけもらって上がっておいで」
《はい》
たったこれだけなのに、耳触りのいい声で胸の奥が乱される。
いい歳をした男がこんな調子でいいのかと思う時もあるけれど、病のように蝕まれるのは本望だ。