溺愛CEOといきなり新婚生活!?

「ここ……会社、ですよっ……?」
「だから?」
「んっ……ダメ……」

 俺の肩を押して、キスをやめさせようとする反抗がかわいい。
 その両手を掴んで、頭上で一纏めにすると、無防備な彼女は瞳を震わせて見上げてくる。


「九条さんもいるじゃないですか」
「もう帰した」
「えっ!?」

 おそらく、九条の存在を切り札にしていたのだろう。
 前にうちでパエリアを食べた夜、九条が来ていても身体を重ねた後に、彼女は言ったのだ。
 “もうこんなドキドキすること、しないで”って――。


 花澄、本当にそう思ってた?
 やめてほしかったのに、あんなに感じて乱れて、自分でも漏れてしまう艶声の始末に困ってたじゃない。

 俺が「声は出さないで」って言ったのに。
 結局我慢できなくて、キスで封をしてあげるしかなかったんだよ?

 ――覚えてるの?


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