溺愛CEOといきなり新婚生活!?
「今朝のサラダのドレッシング、上遠野さんの手作りだったでしょ?」
「どうしてわかったんですか?」
「これでも、何店舗かレストランを経営してるからね」
洗い物を始めた私の手は泡にまみれていて、許可なく髪に触れてくる永井さんの手をよけられなかった。
「俺のために作ってくれた?」
「……触らないでください」
「好きな子に触れたいのは、当たり前」
「私は、永井さんのこと好きじゃないです」
彼の指先から、掬われていた髪がさらりと落ちる。
はっきりと自分の気持ちを伝えただけなのに、沈黙が流れると気まずくて、おもむろに彼を見上げる。
「彼と一緒に暮らした時に作ってあげるためです」
「そんな真っ赤な顔で言われてもね……」
右の口角だけを持ち上げ、もったいぶるように言葉を切って、作り終えているおかずを隣で皿に盛りつけはじめた。
「なんですか? 言いたいことがあるんですよね」
「気にしなくていいよ」
風向きが変わったように冷たくあしらわれて、肉じゃがが入った鍋の蓋を閉める永井さんの顔を覗き込んだ。