溺愛CEOといきなり新婚生活!?

「やっぱり、それ似合うね。バレッタっていうんだよな?」
「そうです。雅哉さんとデートした時、一緒に選んでくれましたよね」
「花澄は何を着けてもかわいいな」

 先日、アッシュブラウンに染め直した肩下までの髪をハーフアップにして、バレッタで留めてきた。彼がかわいいと言ってくれたものは、率先して取り入れるようにしている。
 服も、仕草も、自宅で作る料理も。全部彼が気に入ってくれたもので揃えるようになったのは、付き合い始めてすぐのことだった。



「……どうしても帰るの?」
「明日、朝から客先に行くことになったからね。ごめん」

 彼はデートをすると私の自宅に泊まっていく日がある。そして、そういう日は今日よりもお酒を多く飲むし、煙草も吸う。
 だけど、帰ってしまう日は飲酒も控えめで、煙草は絶対に吸わない。

 どうしてなのかなんて聞かず、彼の意思に従うのは、いつからかこれが普通になってしまったからだ。
 理由を聞いたって、今夜みたいに翌朝客先と会うからだって言うのだろうし、推察力のない女は嫌いだと言っていたからどうも言い出しにくい。

 付き合い始めた二年前から通い続け、ふたりの行きつけとなった和食店で談笑しながら食事をして、二十二時過ぎに店を出た。


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