溺愛CEOといきなり新婚生活!?
通された個室で、丁寧に盛られた煮物や鮮魚の刺身に箸をつけるものの、この二年の間、見たことのない冷たい瞳で私を見た雅哉さんの表情が忘れられない。
「口に合わなかった?」
「食事もお酒もとても美味しいです」
私は永井さんに小さく首を振り、口角をキュッと持ち上げて微笑みの形にした。
「それならいいけど……さっきからなんだか上の空みたいだから」
「あの……先ほどの方は」
「あぁ、鳳凰堂の専務さんで、俺の大学の先輩。学生時代は交流なかったんだけど、数年前のOB会で知り合って、仲良くさせてもらってるんだ」
「そうなんですか」
雅哉さんだって分かっているのに、あえて確認しないといられないくらい、何かに縋り付きたくなる。人違いだったらいいなって思うから。雅哉さんが私をあんな風に扱うなんて、信じたくないのだ。
「すごくいい人でね。うちも鳳凰堂には良くしてもらってるんだよ。素敵でしょ、小泉さん。夜が似合う渋い男って感じがするよね」
「はい……とっても素敵だと思います」
私が本音で返事をすると、そっかと言って、永井さんはわずかに肩を落としたように見えた。