溺愛CEOといきなり新婚生活!?

 九条さんの運転で、彼と一緒に帰宅した。
 店を後にする時も、まだ食事をしていた雅哉さんは他人行儀に顔を出して挨拶をしてきたけれど、それにも調子を合わせてしまった。
 どうやら『初対面の上遠野さん』には弁解の連絡すらくれないようで、携帯は全く鳴らない。


「手、出してください」
「手? こう?」

 手のひらを上に向けた永井さんの右手を少しだけ引き寄せ、私はゆっくりとマッサージを始めた。


「……気持ちいいけど、急になに?」
「ごちそうになったお礼です。これくらいしか浮かばなかったので」


 親指の腹でゆっくりとツボを押しながら、口元に笑みを作って永井さんの顔を見上げた。表情を緩めている彼は、私と雅哉さんの関係に気づいていないのだろう。


「それから、気を使わせてしまったのでお詫びです」
「謝られるような覚えはないよ。小泉さんが素敵で緊張したのは自然なことだと思うし。まぁ、同じ男として悔しいけどね」

 彼を見つめながら今夜の出来事を思い出せば、今にも涙が滲みそうになる。


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