溺愛CEOといきなり新婚生活!?

「今日お会いした鳳凰堂の小泉さん……実は、私をサンプリングマリッジに出した、例の彼なんです。二年前から」
「えっ……」

 いつもは涼しげな目元が丸くなって、永井さんの驚きを感じさせる。彼は途端に切ない顔を見せ、繋いでいた手を一気に引いて私を抱きしめた。


「絶対に、俺が幸せにする。小泉先輩じゃなくて俺を選んで」
「永井さん……」
「俺なら、そんな悲しい顔させない」
「……どうして、永井さんはそんなことばかり言うんですか?」

 力強く抱きしめてくる永井さんの腕は解かれる様子もなく、想いが身体に染みてくるような気がして、永井さんの腕の中にすっぽりと収まった私は離れようとした。


「お願いだから、俺に奪われてよ」

 ドキドキと忙しなく動く鼓動は、永井さんの想いを感じているからなのか、雅哉さんを想う心が背徳感に襲われているからなのか、未だに混乱している心が自分でも見えない。


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