溺愛CEOといきなり新婚生活!?
「……いや、知らない人だったと思うけど」
永井さんは、私の問いかけに数秒の間をおいて答えた。
「そうですか。誰だったんだろう……彼女、かな。……なんて」
自分で言って切なくなる。冗談交じりに不安を口にすれば、自覚できるほど不器用な笑顔が浮かんでしまった。
「っ!?」
ベッドに座っていた私を膝立ちで抱きしめてきた永井さんは、苦しくなるほど両腕に力を込めてくる。
「小泉先輩が、上遠野さんを彼女だと俺に紹介しなかったのがショックだった? 初対面を装った彼が信じられなくなりそうで、嫌なんだろ?」
今にもこぼれそうだった涙が、ひと筋の跡を作って頬を伝う。唇の端から滲む塩気が切なくて、とうとう私はこらえられなくなった。
大切に守ってきた恋が、この三日で音を立てて崩れ、指の隙間から落ちていくようで……。
「小泉先輩に見せられない涙も、俺なら見過ごしたりしないのに」