溺愛CEOといきなり新婚生活!?
リビングに戻ってきた永井さんは、Yシャツの袖をまくりながらソファに座り、タブレットを充電器につないでから、海外の英字新聞を読み始めた。
「難しい顔してるけど、なにかあった?」
「……いえ、特に何も」
ひとり分の間を空けたまま、彼の隣に座っていたらふと聞かれて、私は首を傾げる。
「そう。小泉先輩とは連絡取ってるの?」
「はい。木曜にデートしてきます」
会って話せば、すべて私の考えすぎだったと流せるはず。一緒にいた女性も取引先の人でそれ以上の特別な関係はないと、納得できる理由を聞かせてくれるだろう。
雅哉さんは誠実な人だ。だからこそ二年の時を過ごしてこれた。
「今度はすごく嬉しそうな顔をするんだね」
新聞をめくりつつ、私の顔を見て彼は小さく笑った。
「あ……すみません」
「素直でいいと思うけど、あまり俺を妬かせないで」
眉尻を下げて微笑まれると、どういうわけか胸の奥がきゅうっと狭くなる。
恋愛感情はないはずなのに、永井さんの優しい表情はできたばかりの心の隙間から染みこんでくるようだ。