溺愛CEOといきなり新婚生活!?

 待ち望んだ木曜は、朝から気合が入っている。
 雅哉さんの気持ちが私にあるって知りたいから、彼が好きそうな服を着て、気に入ってくれた香水もほんのり香る程度に薄く髪につけ直し、社を後にした。

 数日前、この横断歩道で信号待ちをしていたら、秘書の九条さんに話しかけられて……永井さんの社用車に乗せてもらって……。
 雅哉さんと会わなければ、楽しく食事をごちそうになるだけの夜だったのに。きっと今日だって楽しいデートをするだけでよかったはず。


《花澄、もう会社出た?》
《はい。待ち合わせに向かってます》
《そう、それならいい。俺も今から向かうから、五分くらい待ってて》

 雅哉さんから連絡が入って、今日は仕事を早めに切り上げ、私との待ち合わせに向かってくれていると知った。
 どんな顔をして、何を思案しながらやってくるのだろう。
 私は、どんな顔で待っていたらいいかな……。

 前までなら何も疑わなかったのに、些細なことでも彼の気持ちがどこを向いているか確かめなくてはいられなくなってしまった。
 やっぱり、サンプリングマリッジなんて受けなきゃよかった。
 でも、そうしないと彼は私と同棲をしてくれないようだし、同棲も叶わないとしたら結婚なんてもっとありえないのではないかと思う。


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