溺愛CEOといきなり新婚生活!?

 品川駅構内の時計台の下に立ち、待つこと五分ほど。
 京急線側のエスカレーターから雅哉さんがやってきた。

 あぁ、素敵だなぁ。あんなにムカついたり、泣きたくなるほど切なかったのに、彼を見ただけできゅんとしてしまうのは、私が愛してやまない人だから。
 ずっと会いたかったと感情が吹き出しそうになるのを抑え、笑顔で彼を迎えた。


「花澄はいい女だから目立つな。これだけ人がいてもすぐに見つけたよ」
「私のほうが先に雅哉さんを見つけていましたよ」
「いや、俺だな」

 どっちが先かを言い合いながらも互いに笑顔で駅を出る。傍から見れば、どこにでもいる仲のいい恋人同士に見えるだろう。世間の恋人と違う現状なんて、誰にもわかりっこない。
 まさか彼が鳳凰堂の専務だということも知らない人が多いだろうし、私が彼以外の男性と同棲しているなんて思いもしないはず。ましてや、永井社長が相手だなんて……。

「今日は、あのホテルに行こうと思って」

 彼がやってきた京急側へ下り、目の前の横断歩道へやってくると、雅哉さんは私の手を取って歩き出した。


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