寵姫志願!? ワケあって腹黒皇子に買われたら、溺愛されました
リディアの家は裕福ではない。カイネのもとに嫁げば、困ったときは助けてもらえるだろう。それが一番の親孝行になることはわかっている。わかっているけれど……。

「なぁ、リディア。カイネが嫌ならさ、その……えっと……」
ルークがもごもごとなにか話そうとしていたが、リディアの耳には届いていない。
「あー! でも、やっぱり嫌なものは嫌!」
突然発せられたリディアの大声にルークはびくりと肩を震わせる。
「ありがと、ルーク! ルークと話してたら、自分の気持ちがはっきりしてきたわ。カイネのもとに嫁ぐのは嫌。父さんに正直に伝えることにする」
リディアは空になった洗濯かごを勢いよく持ち上げると、くるりと踵を返しルークに背を向けた。
「お、おいっ。待ってよ、リディア」
(決めた! 結婚は当分しない。なにか女でもできる仕事を探そう! できれば、うんと稼げるやつがいいわ)

その日の夕食後、リディアは自分の決断を家族に告げた。父親も母親もうんと驚いたが、マイアだけはやっぱり……という顔をしている。リディアがほかの娘たちのように結婚に憧れを抱いていないことを知っているからだろう。それに、気の弱いマイアはよくカイネにいじめられてもいた。
< 5 / 26 >

この作品をシェア

pagetop