一夜の。
俺は自分が熱くならないようにコントロールする。
今野社長は 照れたように笑った。
「あ。はい。あんな素敵な方 本来なら自分で話しかけることすら話かけられないのに。
お恥ずかしいです。」
「駅でお会いしたとお聞きしましたが。」
その言葉を発した時 今野社長の頭にハテナが浮かんだのが見えた。
「いえ、私たちが初めて会ったのは 待ち合わせしたフランス料理のレストランですよ?」
考えてみれば分かることだ。
こんな大きな会社の社長は本来自車を持っているはず。
電車を使って 通勤しているなんてあり得ない。
じゃあ 駅で会ったのは誰だ?
「もしかして親父?」
「??
はい。そちらの会長様から このお話を貰いました。ご存知なかったですか? 」
「あ。いえ。有馬はあまりプライベートを話したがらないもので。」