一夜の。
「本心だよ。有馬ちゃん。」
俺がそういうと有馬ちゃんは顔を背けて
気まづそうな顔をした。
「私には、もう婚約者がおりますので。」
婚約者なんて言わないでよ。
親父が半分脅しで決めたやつなんて婚約者とは言わない。
「有馬ちゃんは譲るつもりはないよ。」
俺はグッとコーヒーを飲み干した。
「シャワー借りていい?俺もう準備しなきゃいけないから。
有馬ちゃんは 今日昼からだよね?
もう少し寝てれば?」
有馬ちゃんが出勤する頃には会社に戻れるようにしよう。
親父を説得して。
有馬ちゃんがもし自分と付き合ってくれなくてもいい。
ただ俺と俺の会社のために結婚だなんて嫌だ。
秘書にこの会社の将来を買ってもらうなんて かっこ悪い。