一夜の。


紙と一緒に同封されていたローズピンクの指輪は 一目で分かるくらい高価なものだ。


字は人を表すと言う。

この綺麗な字を書く今野社長は 何度かお会いしたこともあるけれど

うちの社長くらいの年齢だが しっかりしていて 物腰の柔らかそうな方だった。


「分かりました。」


私は震えた声で そう言うと 会長は

安心したように笑った。


「助かるよ。君を雇ってやはり正解だな。」


「いぇ。」


でも その日からずっと 指先の震えが止まらなかった。




< 99 / 161 >

この作品をシェア

pagetop