一夜の。
紙と一緒に同封されていたローズピンクの指輪は 一目で分かるくらい高価なものだ。
字は人を表すと言う。
この綺麗な字を書く今野社長は 何度かお会いしたこともあるけれど
うちの社長くらいの年齢だが しっかりしていて 物腰の柔らかそうな方だった。
「分かりました。」
私は震えた声で そう言うと 会長は
安心したように笑った。
「助かるよ。君を雇ってやはり正解だな。」
「いぇ。」
でも その日からずっと 指先の震えが止まらなかった。