たとえ僕がいなくても
入学式が終わり、教室でHRが始まる。

それにしても、さっきはひどい目にあった。

10分前のこと…

僕は普通に体育館を出て、トイレに行こうとしていた。

「ヤバい!あの新入生カッコいい!」

「金髪…外国人か?」

「目の色キレー!珍しくない?」

はいはい、またこれか。

僕は見世物じゃないんだけど。

「キミ!その見た目を生かして演劇部に入らない⁉︎」

…え?

何これ、部活の勧誘?

「見た目、ですか。
申し訳ないんですが、部活に入る気はないので。」

見た目が決定打なら尚更だ。

それに、僕は本当に部活に入る気はない。

「まぁまぁそう言わずに!
見学だけでも来てみて!面白いもの、見せてあげる。」

面白いもの…?

「はは、考えておきますね。」

と、なんとかその場はやり過ごせたのだが…

その後も様々な部活に勧誘された。

「高身長を生かしてバスケ部に!」
「いやいやバレー部に!」
「科学部で自分の可能性を広げよう!」
「いい声は放送部に必須!」


…と、いうことがあった。

何なんだ。

結局顔だろ?顔がいいから声かけるんだろ?

そんなの、もううんざりだ。

担任の紹介が終わって、次は生徒が自己紹介をするようだ。

幸い僕の名前は『雪川 美影』なので、一番最後だ。

周りの自己紹介を聞いていると、

大体みんな名前、出身中学校、好きなものを言っている。

「初めまして、俺は相田真也って言います!
出身中学校は…」

こんな感じだ。ちなみにこの相田真也は、出席番号1番の男子。

そんな感じで自己紹介がすすんで、僕の番になった。

「…初めまして、雪川美影です。
出身中学校は第一中学校で、好きなものはー…静かなところ…とか?です。ちょっと派手な髪と目ですけど、これ生まれつきです。よろしくお願いします。」

女子がザワザワしているけど、無視無視。

口調こそ静かな風だが、最後に微笑んでおいたので、印象は悪くないだろう。

「はい、じゃあ雪川くんに質問ある人〜」

担任め、余計なことを。

「はいはーい!」

「じゃあ八重さん。」

八重晴海。いかにも目立ちたがりって感じの女子だ。

「雪川くんって、ハーフですか?」

ありきたりすぎるだろ、テンプレかよ。

「いや、純正の日本人です。
ついでに言うと祖父母も日本人です。」

つまりクォーターじゃないってことだから。

同じ質問が来ませんように。

「へぇー!ありがとう!」

いえいえと、ニッコリ笑顔を向けると八重晴海は顔を赤らめた。

これ以上の質問はごめんだ。早く切り上げてくれ。

「それじゃあ、プリント配るから後ろに回してね〜」

やれやれ、自己紹介は終わったようだ。

「はい。」

前に座っている男子がプリントを回す。

「あぁ、ありがとう。」

確かこの男子は…森山優だったな。

「はい。」

後ろの女子は…って、あれ?

こんな人いたっけ?

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