たとえ僕がいなくても
僕の後ろにいたのは、出席番号21番の女子…

の、はずなのだが。

『えー、こんな女子いたっけ?』

僕は一度聞いた名前は忘れないし、顔だって覚えるはずなのに。

なぜかこの女子のことは、何も覚えていない。

「…ありがとう。」

うっわ声可愛い!

ていうかよく見ると顔もすっごく可愛い。

「…?あの、プリント…」

「えっ⁉︎あ、あぁ。ごめんね。」

あまりに突然の出来事に、プリントを渡すのを忘れていた。

前を向いて、担任の話を聞いている途中、僕はずっと彼女のことを考えていた。

あの子の名前が知りたい。

あとで話しかけてみよう、LIMEのアドレスを渡してもいいかも知れない。

そこまで考えて、ふと思った。

『僕に、人に好意を寄せる資格なんてあるんだろうか』

顔は、問題ないと思っている。

だけど…

また、前と同じことになってしまわないか?

彼女には、リナと同じような目にあって欲しくない。

「…くーん、雪川くーん?」

担任の声で、ハッと我に帰った。

しまった、当てられていたのか?

「は、はい。」

「顔色が悪いけど…大丈夫?」

え、顔色?

確かに、少しだけ気分が悪い。

「ちょっと、気分が悪いです。
保健室に行ってもいいですか?」

担任からの了承を得て、保健室へ向かった。

そうだ、保健室の先生に彼女のことを聞いてみよう。

何か教えてもらえるかも知れない。
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