たとえ僕がいなくても
僕は保健室に行って、検温してもらった。

「36度7分、異常なし。」

保健室の男性教師、成田和成。

みんなから、『ナリナリ』と呼ばれているらしい。

「先生、質問があるんですけど…」

先生を見上げた。

「んー?どうした、モテ自慢なら聞かないぞー。」

そんなん言わねぇよ。

「違いますよ。1年2組の女子で、出席番号21番の子って、なんていうんですか?」

僕が尋ねると、先生は不思議そうな顔をした。

「…あー、あの子な。
ちょっと待ってろ、名簿持ってくる。」

え?

先生も覚えていないのか?

うちの高校はそんなに生徒数多くないし、保健室の先生なら知ってると思ったんだけど。

「えーっとー、21番21番…あ、この子だ。」

先生が、僕に名簿を見せてきた。

…っていうか、この名簿表紙に『極秘』って書いてあるけど、いいのか?

「じゅうろくや…これ、なんて読むんです?」

「いざよい、ゆきかだ。
十六夜千華。一発じゃ読めないな。」

十六夜千華…

ますますおかしい。

こんな珍しい名前なら、絶対忘れないと思うんだけど。

「…先生、千華さんって、何か特別な事情があったりしますか?」

どうしても、彼女のことが気になる。

「うーん…まぁ、お前ならいいか。」

何故そう思った。秘密なら守れよ。

「あの子は、元アサシンなんだ。」

は…?

アサシンって…暗殺者のやつ?
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