愛しかた
守りたいもの

「綺星(きら)ちゃん、彩人(あやと)さんおかえり」

出掛けようと向かった先の玄関の扉が外から開いた。
使用人はこの玄関を使わないし、パパとママがこの時間帰って来るなんて考えられず、姿は見えなくても、予想は出来た。

「おかえりなさいませ」
「ただいまぁ。優星(ゆら)ちゃん、咲人(さくと)君」

今期新作の上等なスーツに身を包んだ綺星ちゃんは完璧に磨き上げられたパンプスを脱いで自身のスリッパに履き替えて家へと上がる。脱いだパンプスを彩人さんが整えて、彩人さんも又自身のスリッパに履き替えた。

「どこか行くの?」
「うん。綺星ちゃんはもう終わり?」

あれ、どこかで会食って言ってたっけ?

「ううん。着替えに戻ったの。夜に会食があって」
「そっか、お疲れ様」

玄関フロアでそんな会話をしながら、私は咲人が用意してくれたブーティーに足を入れた。

「あまり遅くなっちゃ駄目よ」
「大丈夫、明日休みだから」
「んもぅ。咲人君、宜しくね」

咲人は玄関の扉を開けて、綺星ちゃんにお辞儀する。「お任せ下さい」と。
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