愛しかた
この雰囲気だからか、浅野さんはさっきとは打って変わりククッと小さく笑うだけだった。

「ショック受けてくれてるんだ?嬉しいね」

掴めない人だ。

「オムライスを勧めてくれたあの笑顔を見た後じゃ、ショックですよ」
「ククッ、そっか、そっか。でもあそこのオムライスが美味しかったのは本当だったろ?」

わざとだろうか。此の期に及んであの可愛い笑顔を見せてくるなんて。

「はい」
「昔からオムライスってのには目がなくて。良い店見つけたよ、本当」

相当好きなのだろう。

「いつか素敵な人に作って貰えたら良いですね」
「それ結構夢かも」
「・・・夢、ですか」
「夢です。・・・で?本線の話の続きは?」

やっぱり誤魔化されてはくれないんですね。

「・・・そうですね、始めに警戒した理由は一つですけど、今は二つに増えました」
「へぇ?増やしちゃったんだ」
「ですね」

奥の窓からは地上のキラキラとした光が一望できる。

あの光を見るといつも思う。皆さまご苦労様ですと。
こんな時間のビルの無数の光。そう思わずにはいられない。
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