愛しかた
エレベーターから降りてからトイレへと一旦逃げ込んで、咲人に電話を掛けた。

シアター前に迎えに来てと言えばもう待っていると不機嫌そうに言われる。相変わらず仕事が早いことですこと。

軽くパウダーだけをして出ると、浅野さんは「迎えは？」とだけ尋ねた。

「もう来てるみたいです」
「優秀だね」
「そうですか？見張られてる感じがしてどうもそんな風には捉えらえられません」
「お嬢様なんだから、そこは仕方ないさ」

わかってますとも。そんな事。
嫌って程言われ続けてきたんですから。

「車まで送るよ」と浅野さんは、さっきと同様私の歩幅に合わせ、二人でエントランスを出る。

「咲人君、こんばんは」

とても親し気な感じでそう言った浅野さんに咲人はなんの表情を見せないまま浅野さんに一礼した。

どうして咲人の名前まで知っているんだろう。
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