愛しかた
「シャンプーしてくれる?」
「喜んで」

咲人のシャンプーは本当に気持ちが良い。
うっかりしてると、そのまま寝てしまう時もある。

ピンクの泡が一面に浮かぶ浴槽に浸かりながら縁に首を掛けると、咲人が丁寧な指使いで濡れた髪を梳いていく。

「伸びたな」
「そうよね。シャンプーが面倒になってきた」
「呼べばいいのに」
「呼んだでしょ、今日」

それに浴室では無礼講。
というかむしろ咲人のが上になる時もある。

「彼とずっと一緒に?」
「予想外の出来事が重なった結果そうなったの」
「それで口説かれたのか」

あぁ、やっぱりばれた?

「うん。すごく厄介なことになりそう」
「厄介って?」
「あの人が京真さんを綺星ちゃんに紹介したんだって。面倒臭いことにならないといいけど」

四人で出掛けようなんて言われた日には悪夢でうなされるに違いない。

「・・・注意しとくよ」
「そうして」
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