愛しかた
二度の情事で静かな寝息を吐き出した彼は、誰がどう見たって疲れている様子で。それなら会わなければ良いのにと思うけど、決して私からは口にしない。

腕の中からそっと抜けて、シャワーを浴びる。

アメニティーのボディソープは使わない。
オーガニック製品の結構高いやつだから本当は使いたいけれど、それを我慢して家から持ってきた自分のものを使う。

彼が起きる前にと早急にシャワーを終えて、挨拶も無しにさっさと帰り支度をしてからそっと部屋を出る。

咲人に言った時間まで余裕があった。

「もしもし?早く終わったからもう来てくれる?いつものカフェにいるから」

電話をして、ホテルの数件先のカフェに入る。

この時だけ。
この、一人でカフェにいる数分間の間だけ、目の前が真っ暗になるくらいの自己嫌悪に陥る。

どうしてこうなってしまったんだろうと無駄なことを考え、どうしてあの時頷いてしまったんだろうと無駄な後悔をする。
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