愛しかた
そうだ。
今頼れるのは、この人しかいない。

「お願いがあるんです」
「うん、言ってごらん」

見返りを求められるのはわかってる。
けどそれでも、今はこの人にしか頼めない。

「・・・今日、綺星ちゃんと一晩過ごして下さい」
「・・・それだけ?」
「はい。今日一晩、」

きっとそれでももしかしたらって思うけど、でも今日は乗り越えられる。

「いいよ」
「・・・ありがとう、ございます」
「その代わり、」

私も一晩、この人と過ごさないといけないのだろうか。

「浩典君と俊平との話、きっちり聞かせてもらうよ」

笑った京真さんにその真意を訊こうとしたけど叶わなかった。

「お待たせしました」

浩典が給仕と浅野さんを連れて来たからだ。

「ワインに合うもの適当に選んで貰ってるよ」
「なら間違いなさそうだな」
「それどういう意味だよ」

二人が椅子に腰を下ろすと、綺星ちゃんも戻り、再びワインの試飲会が始まった。


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