【完】触れたいのはキミの鼓動
「…はぁー…疲れる。私帰るわ…」
「一緒に帰ろ?」
「いや」
「どうして?」
「なんか、身の危険を感じる」
「送り狼になんかなんないよ?」
「どうしてそう言い切れんの?!」
「はは。やっぱり可愛い。小桜。…大好きだよ」
「からかわないで!」
「あ、待って…」
「な、に…っ?!」
ぐいっとカバンを持ってその場を離れようとしたら、強く腕を掴まれた。
そして、肩と頭それぞれにぽんぽんと手を置かれる。
「なにしてんのよ?」
「ん?消毒?」
「…はい?」
「いいんだよ。小桜は知らなくても。じゃあ、行こっか」
「な、ちょっとー!私まだ一緒に帰るだなんて言ってない!」
今みたいに時々見せる「男」の顔にいちいちドキドキときめいてる自分が嫌になる。
…あぁ。
こいつの「すき」は軽い挨拶みたいなもんなのに。
こんなの、日常化してる事なのに。
傍から見たら、「あぁ、またやってる」くらいの事なのに。
本当に、私はこいつの事がわからない。
三年間もくされ縁をしてるのに…。