【完】触れたいのはキミの鼓動

「石井ちゃん?」

「…あ?…あー…なんでもねぇよ。おら、プリント寄越せ」

「………はい」


ちらり

おずおずと手渡されたプリントを見て俺は顔をしかめた。


「あぁ?なんだ、こりゃ。白紙じゃねーかよ。ったく。お前さん、俺にケンカ売ってんのかー?」

「だってー。石井ちゃん、担任なんだから、知ってんじゃん。家の事情!母子家庭だし、下に妹と弟いるし、大学行ける様な余裕ないって」

「あー…まぁな。そりゃ分からないでもねぇが、お前の成績なら、奨学金でなんとかなんだろーよ?」

「うーん…」


悩み出した神谷の頭をさり気なく撫でてやると、その後ろでケモノみたいな顔をして俺を睨み付ける須賀と目が合った。
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