【完】触れたいのはキミの鼓動

「冗談なんかじゃねーよ。俺はお前が好きだ。だから、俺のもんになっちゃえよ」


甘くて蕩けそうな声で、まるで獲物を追い詰める野獣のような瞳をしながら…そんな事を言わないで欲しい。
胸がヘンな風に高鳴って、おかしくなりそうだから…。


「や、やー…それはぁ、あ!石井ちゃん、からかってんでしょ?」

「あー?大人の本気、なめんなよ?」

「~~?!」


フッと私の耳元に一つ息を残して石井ちゃんは私から離れて行く。
私はビクンと体が震えて、それが恥ずかしくて俯いた。
その間に、車は発進していく。
流れる窓の外の景色を全く堪能することも出来ずに、困ってしまった。


「まぁ、そんな警戒すんなって。こっちは気長にいくしな。ついでに大人の余裕ってやつも見せてやるよ。…じゃ、こっからは一人でも帰れんだろ?また明日な。ちゃんと学校来いよ?」


そう言って、私を家の最寄で降ろして、石井ちゃんは去って行ってしまう。
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