【完】触れたいのはキミの鼓動
そして、猛烈に眠いまま学校へ向かうと、目の前に見慣れた背中が視界に入った。
私は急いで、その後ろ姿を追う。
「須賀!」
「…おはよ」
「あ…おはよ…。あの、昨日はごめんね?なんか、一人で帰らせちゃって…」
自分から声を掛けておいて、少しだけ気まずくなってそう言うと、須賀は低いトーンでこう返してくる。
「いいよ、別に。どうせ小桜は俺と帰るつもりなかったんだし」
そのピリピリした物言いに、カチンとくる。
「む。なんか、やな言い方。なんでそんなにキレてんのよ?悪かったって謝ってんのに…」
「キレてないよ。じゃ、俺先に行くから…」
「あ、ちょ、ちょっと、須賀」
「なに?」
「その、ほんとに、ごめん」
須賀のあまりの態度に反省して、ちゃんと謝った。
そうすると、ふっと須賀もムスッとしていた顔を緩めてくれる。
「ん。こっちもごめん。ほんと、怒ってないから。ただ、ちょっと用事があって…」
「あ。あぁ、そっか。ごめんごめん。じゃ、じゃあ、私も用事思い出したから、先行くよ!じゃね!」
須賀の視線の先…須賀の隣に吉田さんの姿が見えて、鼻の奥がつんとしてきて。
ヤバイと思ったから、私はダッシュで須賀の横を走り抜けた。
「小桜?」
そんな須賀の声も振り切るように。