【完】触れたいのはキミの鼓動
制服の胸の辺りをぎゅうっと掴んでも痛みは治まらない。
こんな気持ち知るんじゃなかった。
須賀のことなんか好きになるんじゃなかった。
なんて、自分は浅はかなんだろう。
須賀の隣にいるだけで良かったのに。
望んでしまった。
願ってしまった。
いつか、私を好きになりますように、と。
須賀には好きな人が…吉田さんがいるというのに。
私と須賀じゃ、釣り合わない事は分かっているのに…。
私は暫くそうしていた後、徐に立ち上がって重い足を引き摺るようにして歩き出した。
口の中がカラカラに渇いて、泣き声も出せなくなっていく。
それとは反比例して幾つも零れていく涙。
こんなに、いつも見慣れて景色が滲む事があるだなんて思いもしなかった。