【完】触れたいのはキミの鼓動
「はぁ…っ」
ぐしゃぐしゃと前髪を掻き毟る。
そんなことをしても、なんの解決にもならないのに。
やっぱりオレがこんなだから、いけないのかな。
傍からしたら、きっと凄くいい加減な奴だと思われているんだろうし。
…石井ちゃんの方がよっぽど、しっかりしてる。
それは、年上の…しかも担任なんだから当たり前かもしれないけど。
小桜は、かなり石井ちゃんに懐いてるし、石井ちゃんが小桜の事を特別扱いしてるのはあからさまで、イライラするくらいオレを挑発してくる。
「あぁっ、もうっ!」
こんな自分は知らない。
今までこんな風に、誰かを一途に想った事なんて一度もなかった。
「最初から報われなかったの?…入る余地なかった…?」
一人呟いて、立てていた膝に顔を埋めた。
思わず泣いてしまいそうだったのをなんとか堪える。
きっと、傷付けただろう小桜の涙の方が痛いだろうから。