【完】触れたいのはキミの鼓動
「……なんなんだよ…」
見せ付けるような、決意。
その力強さに手も足も出ない。
このまま、小桜が石井ちゃんのものになってしまったら?
そんなの耐えられない。
だけど、今の自分じゃどうしていいのかが分からない。
「…っ。ほんと、バカだな…オレ。全然小桜の事見えてないじゃんか…」
悔しくて、苦しくて、じわりと涙が浮かんできたけど、やっぱり泣くわけにはいかなかった。
…小桜の泣き顔が浮かんでしまったから。
石井ちゃんにあって、オレにないもの。
それは、経験だけじゃなくて…。
一歩踏み出す勇気と自信。
そして、小桜を包み込む力強さ。
オレだって、本気なんだよ?
小桜が望むならなんだって出来る。
それだけじゃ、ダメなんだろうか?
それだけじゃ、足らないんだろうか?
今、小桜は何を想ってるの?
どうすれば、また笑い掛けてくれるの?
それとももう、ダメなの?
オレの想いが届かない場所へ小桜はいるの?
幾つも、頭の中に生まれていく問い掛け。
口には出せない女々しい気持ちが熱いマグマみたいに、胃からせり上がってくる。
もう、ダメなのかな?
小桜の傍にいる事も許されないの?
ふっと溜息をついて、オレはあの時の小桜の泣き顔をもう一度思い浮かべた。