【完】触れたいのはキミの鼓動
こんなやり取りは、三年間ずっと同じ。
多分それは、私が長女で、年の離れたお兄ちゃんが欲しいと憧れていたからかもしれない。
石井ちゃんも、私の事を可愛がってくれたし(勿論、贔屓はない…はず)何より、彼の存在自体が居心地の良いものだったから。
「じゃあ、明日までにプリント出しに来いよ?分かったな?逃げんなよ?」
「はーい」
絶対だぞ!と私に釘を刺すだけ刺して、石井ちゃんは最後に「叩いて悪かったな」と私の頭をぽんぽんと優しく撫でていった。
「あーぁ。憂うつ。進路とかマジで面倒くさいーっ」
長い髪(ストレートなだけが自慢)を一房指で弄んでから、スタスタと自分の席に戻ると、須賀が、なんだか不機嫌そうに私をじっと見つめてくる。
…あれ?取り巻きがいない?
さっきまでいたはずの大勢の取り巻きが一人もいなくなっていて、私はキョロキョロと周囲を見て驚いた。
…珍しい事もあるんだなぁー…。
そう思いつつ、須賀の手元を見て、今度はそっちに悲鳴をあげそうになった。
「ちょ!なんで急にこんなに減らしてんの?!これじゃあ、さっきとは逆に授業受けられるわけじゃないじゃん!」
見事にすっからかんになったペンケースを見て、私は唖然とする。