【短】繰り返しの雨宿り


 トマトジュースを一口飲む。確か、ずっとトマトジュースは嫌いだった。
 それがなぜ飲みたくなったのか、私は不思議に思うも、あまりの爽やかさにつまらない事を気にするのはやめた。




「それはよかった」




 まるで自分のことのように喜ぶ男性に、罪悪感が芽生える。



 私は誤魔化すようにまたトマトジュースを口に入れた。




「言いにくいことなら、大丈夫ですよ」

「ん?」

「話、なかなか言わないから」




 まるで急かすようなことをしてしまって、私は途端に恥ずかしくなった。その様子が面白かったのか、男性がくすりと笑う。




「違う、違う。ただ、な」

「なんですか?」

「君と長く話していたくて……ただの我が儘だ。気にしないでくれ」




 男性は頭を掻く。どうやら照れ隠しみたいだ。

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