【短】繰り返しの雨宿り


 しかし男性は、すぐに表情を悲しいものに変える。



 私の言葉が気になった様子で、目を伏せるように空の珈琲カップを手に包むように持つ。



 何が気になるのか聞いてみたくても、初めて言葉を交わす知らない男性。
 話を遮るのも悪い気がして、私は聞くことに専念した。




「大学まで一緒でさ。でも、告白はしなかったんだよ」

「なぜですか?」

「彼氏がいたからだ。好きだったけどさ、あいつが幸せならいいと思い込んでたんだよ。俺も若かったからねぇ」




 私にも好きな人がいた。
 学生の頃には私もお付き合いをした経験がある。



 今はあまり思い出せないが、苦い経験ばかりだった。



 なぜか胸を締めつける。




「それで、彼女は結婚しちゃったんですか?」




 自分の苦い恋愛のことを思い出しそうで、私は男性に問いかける。

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