【短】繰り返しの雨宿り
私は常連客だ。
いつもこの喫茶店で雨宿りをする。
口下手なマスターだけれど、話せばとてもいい人で、目の前にいるこの男性とはいつもケンカみたいな話し方をしている。
店内にいる人達は、いつも同じ珈琲を飲んでいなくなる。
またその違和感にまた、気づけなかった。
レジのない喫茶店。
マスターが一人で動き回っている。
お客さんは変わっていくのに、誰も出入り口の扉を出ていかない。
珈琲を飲んだ瞬間に、私たちは消えるから。
罪深い私たちは、罰を受けるために喫茶店を後にする。
繰り返し、何度も。
「それでもまた、教えてくれるの? あなたは、罰を受けなくてもいいのに」
「守れなかったことを悔いて、馬鹿みたいな人生を過ごした。千歳ちゃんを待つことは、悪くない生き方だ。いや、生きるってのはおかしいか」