【短】繰り返しの雨宿り
雨音を遮るようにカウベルの優しい音が耳に届く。
いつもは素通りしていた裏路地。そこに小さな看板と明かりがある。私は迷わずそこに走り、古びた木の扉を開けていた。
「いらっしゃいませ」
中はカウンター席とテーブル席が四つという小さな喫茶店。
おとぎ話に出てきそうな大きな振り子時計の存在感に驚きながら、店内を見渡す。
しかし、カウンターもテーブル席にも人がいる。座る場所はなさそうだ。
「申し訳ない。満席になってしまって」
カウンターの中にいた初老の男性が頭を下げる。どうやら彼が店主みたいだ。