【短】繰り返しの雨宿り
「お嬢さんにとっては数分に感じるだろう。確か駅からここに来ているんだったな」
「はい」
「一年だ」
「一年?」
「毎年、お嬢さんは喫茶店に現れる。そういう繰り返しをしているんだ」
駅から喫茶店への距離は、私にとって数分。でも彼らには一年。それでも待っていてくれる。
男性はいつも、笑顔で相席をしてくれる。
「私を愛してくれて、ありがとう」
ずっと言えなかった言葉。
伝えなければならなかったことをやっと言えた。
男性は少し驚いた表情をしてから、首を横に振る。
「これからもずっと好きだ。待ってるから。また教えてやるから……だから、しっかりな」
男性はいつも優しい。
私はいつも涙が止まらなくなる。